
皆さん、こんにちは。
表面処理薬品のタイホーです。
以前の記事で、電気亜鉛めっきについて簡単に解説してきました。
前回の記事(電気亜鉛めっきとは?)はこちらからどうぞ
鉄が錆びるのを防ぐ為に行われる電気亜鉛めっきですが、電気亜鉛めっきには一般的に3種類のめっき浴があります。
今回は前回の亜鉛めっきの記事で興味を持ってくれた方へ、3種類のめっき浴の違いについて簡単にご説明していこうと思います。
目次
主要な亜鉛めっきはシアン化浴・ジンケート浴・塩化浴の3種類
現在広く行われている電気亜鉛めっきは以下の3種類に大別されていることはご存知でしょうか?
- シアン化浴
- ジンケート浴
- 塩化浴
それぞれ、特徴や、メリット、デメリット等があります。
では早速、各めっき浴について簡単にご説明していきましょう。
シアン化浴とは?
画像:シアン化浴でめっき処理したピース
シアン化浴はめっき浴の主成分としてシアン化ナトリウムを含んだめっき浴です。具体的には、
- 酸化亜鉛(またはシアン化亜鉛を用いる)
- シアン化ナトリウム(現場では青化ソーダと呼ぶことが多い)
- 水酸化ナトリウム(現場では苛性ソーダと呼ぶことが多い)
- めっき添加剤(各メーカーの光沢剤、添加剤など)
を含んだめっき液で作られているのが一般的です。
シアン化浴では全シアン化ナトリウム濃度を亜鉛濃度で割った値のM比を使ってめっき浴の状態を管理しています。
M比=全シアン化ナトリウム(g/l) / 亜鉛(g/l)
このM比が高いとめっきの付きまわり、均一電着性が良くなり、電流が弱い所でもめっきが付きやすくなります。ただし、弊害としてめっきスピードは落ちます。
逆にM比が低いとめっきの付きまわり、均一電着性は悪くなりますが、めっきスピードは速くなります。
品物の形状や、光沢剤の種類、現場条件によっても最適条件が変わりますので、もしも実際にめっきを行う際には気を付けるようにしましょう。
ちなみに、シアン化浴はこのM比によって高濃度浴、中濃度浴、低濃度浴と分かれます。長くなってしまうので、この辺はまた別の機会にご紹介出来れば良いなと思います。
シアン化浴は毒性の強いシアン化ナトリウムを使っているので、厳しい排水規制が掛けられています。
一方で、シアン化浴は均一電着性、被覆力、皮膜物性などが良好な上、不純物にも強い浴です。
また、シアン化浴はそれ自体でも汚れを落とす力があるので、前処理が多少甘くても上手くいくことがあります。
めっき浴の管理も比較的容易なめっき浴なので以前は広く使われていました。
しかし、現在は環境規制が厳しくなってきているので、この後説明するジンケート浴、塩化浴への転換を行う企業も増えています。
ジンケート浴とは?
画像:ジンケート浴で処理したピース
ジンケート浴は、シアン化合物を使用せず、
- 酸化亜鉛(金属亜鉛)
- 水酸化ナトリウム
- めっき添加剤(各メーカーの光沢剤、添加剤など)
を含んだめっき液で作られているのが一般的です。
ジンケート浴の場合は水酸化ナトリウム濃度を亜鉛濃度で割った値(R比)で管理します。
R比=水酸化ナトリウム (g/l) / 亜鉛 (g/l)
R比の値、光沢剤の種類・添加量がめっきに大きく影響を与えるので、各薬品メーカー推奨の値を使って処理するようにしましょう。
ジンケートにはシアン化合物が含まれないので、排水規制には有利ですが、不純物に弱いめっき浴となりますので不純物管理はしっかり行う必要があります。
また、シアン化浴では多少前処理が不十分でも上手く処理できた品物についても、ジンケート浴では完全に前処理を行わないと上手く処理できないことがあるので注意が必要になります。
塩化浴とは?
画像:塩化浴で処理したピース
塩化浴はシアン化浴、ジンケート浴と異なり酸性のめっき浴で、
- 塩化亜鉛
- 塩化アンモニウム
- 塩化カリウム
- 塩化ナトリウム
- めっき添加剤(各メーカーの光沢剤、添加剤など)
を含んだめっき液で作られているのが一般的です。
塩化浴は、亜鉛濃度、塩素イオン濃度、pH、光沢剤量などで管理します。
塩化浴は電流効率が良くめっき速度が早いめっき浴で、光沢、レベリング性についても優れためっき浴です。
しかし、均一電着性は悪く、塩化物が主体となっている浴の為、設備、建物への腐食性が強いというデメリットもあります。
めっき速度が早い、光沢・レベリングが良いという利点からネジやボルト、ナットといった小物部品を大量にめっきするのに適しており、広く利用されています。
まとめ
今回は3種類の亜鉛めっき浴の違いについて凄く簡単に解説しました。
いかがだったでしょうか?
- シアン化浴
- ジンケート浴
- 塩化浴
があります。ざっくりと大きな特性をまとめると、
- シアン化浴は管理が楽なめっき浴で不純物に強いけれど、排水規制が厳しい。
- ジンケート浴はシアンを使わないので排水規制の面では優れるけど、不純物に弱いめっき浴になります。
- 塩化浴は光沢に優れ、めっきスピードも速いけど、均一電着性に劣る。設備や建物への腐食性が強い。
といった感じになりますね。
それぞれの用途・適正に合っためっき浴を使って、めっきを行うようにしていきたいですね!
短くまとめようと思っていたのですが、今回も文章が長くなってしまいました。
読みずらいところなどあったらすみません!
以前書いた化学研磨の記事のように、亜鉛めっきについても実験している様子なんかも記事にしていければと思いますので、ご興味が有る方は楽しみにお待ちくださいね。
今回の記事が亜鉛めっきや化学、実験などに興味を持つ方に対して、ほんの少しでも参考になれたなら嬉しいです。
それでは、今回も、ここまで読んでいただきありがとうございました
なお本記事は以前にnoteに掲載していた記事を加筆・訂正したものになります。
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